最新科学でもまだ解けない疑問。心はどこにある?

harts心はどこにある?

脳の仕組みがわかってくればくるほど、一層疑問が深まることがあります。それは、「心」というものはどこに存在するのかということです。赤ちゃんの動きやしぐさをじっくりと見て、考えてみてもおもしろいでしょう。

心はやっぱり脳にある

大昔、古代ギリシャの時代から現代に至るまで、人間の「心」というものがどこに存在しているのかという問題は、長い間論じられてきた問題です。

古代ギリシャの時代には、科学的な物の見方や考え方が発生してきたので、例えば哲学者のアリストテレスは心は心臓にあるのだと言い、現代でも、医師の倫理や任務に関する宣誓文「ヒポクラテスの誓い」に名を残す医師ヒポクラテスは、脳にあると考えていました。

ちなみに、こうした考え方が登場するまでは、心は霊魂であり、肉体が滅びても生き続けるという宗教がかった考え方が一般的であったようです。

現代の科学においては、アリストテレスの「心は心臓の中にある」という考え方はきっぱりと否定されています。一方、ヒポクラテスの「心は脳にある」という説は、確信的に語られるようになってきました。

というのも、心とだいたい同義として使われてきた「意識」という言葉がありますが、この意識というものについて、脳科学的に相当の部分が解明されてきたためです。

とはいえ、では「意識」とは一体なんだという根本的な部分について、研究はまだまだ始まったばかりであり、脳生理学のみならず、精神医学、物理学、心理学など、現代科学を結集して解明に取り組んでいる最中ともいえる状況です。

「意識」のなぞが完全に解明されて、「心はどこにあるのか」という難問中の難問が解明されるのがいつになるか、見通しは経ちません。かなり先のことになるでしょう。

「自分を自分とわかる」意識が心とかかわっている

五感を使って外界からの刺激を受け、その刺激を知覚すること。さらに、視覚している自分のことを「自分」であると認識している状態のことを、一般に「意識」と呼びます。

まわりくどく、わかりにくい表現になってしまいましたが、これこそが、「心って何だ」「心はどこにある」といった疑問を解明するポイントになるようです。

自分を自分として認識するという働きには、記憶というものが大きな関係があるとされています。記憶の蓄積がなければ、自分とは一体何なのかがわからなくなってしまいます。「心とは、その人が生まれた後、ずっと積み重ねてきた情報の記憶」と深い関係にあるもので、その記憶こそが脳にあるものです。

記憶の意識の関係ということについては、さきに述べたように、ワーキングメモリが重要であるという説もあります。ワーキングメモリというのは、今現在、自分がしていること、しようとしていることを意識にとどめる、要するに記憶し、さまざまな種類の知能を動員して問題解決を試みる機能のことです。自分の考えのモニター機能といういい方もできましょう。これこそが「意識」というものではないかといわれています。

心は科学では解けない永遠の謎?

心というものの広い範囲を「意識」が占領しているのは間違いないのではないかと思います。しかし、では意識はどこで生まれるのかと考えてしまうと、疑問の堂々巡りの状態になってしまいます。

意識という概念は、言葉で説明するのも可能ではあります。「記憶」も「ワーキングメモリ」も、言葉という形にしてこそ意識できるものです。もとを正せば、例えば「痛い」とか、「寒い」というような感覚を知覚として意識できるのは、自分自身がその感覚を「痛い」「寒い」という言葉で考えているからにほかなりません。

では、言葉らしい言葉を持たないように見える赤ちゃんには、心(意識)がないということになってしまうのでしょうか。こう言われたら大抵の人は、そんなことはないはずだと否定するはずです。それこそが、「心は意識だけで説明できるものではない」という結論につながる考え方です。

ところで、「痛いと感じること」や「寒さ」というものは、脳にある神経細胞の興奮で知覚として認識されるものだと説明できるのですが、一方で、なぜそういった電気的な興奮を「痛い」と感じるのかということは、解明されていません。

視覚についても、色や造形、明暗といった機能単位が集合し、なぜ一つのイメージとして形づくられるのか、要するに「見える」というごく個人的な経験がどのように生まれるのかは、わかっていない状況です。

心を脳の働きだけで説明しようとすると、脳が未熟な状態である赤ちゃんは心も未熟であるという短絡的な結論に陥ってしまいます。しかし、科学的根拠はさておいて、赤ちゃんを養育する立場にあり、よく観察している親は、「うまくは言えないが、そんなことはないはずだ」と反発を覚えるのではないかと思います。

脳科学の分野において最先端の研究をしている学者でも、「脳を物理学的なレベルで細かく分析しても、(脳内にあるとされている)心のありかだけはわからない。科学では解明できない問題なのかもしれない」と言っているほどです。

人間の心のありかやその働きは、いまだミステリアスな分野です。しかし、わからないこそおもしろいという側面はあるはずです。赤ちゃんを観察していると、脳が未熟な状態でありながら見せる、どこか大人じみた表情をしたり、人間臭いしぐさしたりと、発見がいろいろあり、「心の謎」の一片を実感できるのではないかと思います。



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