「とんびがたかを産む」はありえない?知能と性格の遺伝

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知能についての考え方は複数あるということを割り引いて考えても、人それぞれという側面は確実にあります。子供の個体差、殊に性格差というのは、遺伝と環境、どちらに負うところが大きいのでしょうか。それとも、それ以外の要素もあるのでしょうか。

知能のよしあしを決める遺伝子は存在しない?

ミュージシャン、アスリート、文壇、学問の世界、芸能界に至るまで、さまざまな分野で一定の成功をおさめ、活躍する人々の生い立ちとして、親御さんが同じ世界で成功した人というケースは枚挙にいとまがありません。「カエルの子はカエル」という諺を思い出します。だから、そういった知能や才能というのは、環境よりも遺伝が影響する部分が多いのだろうなと考えがちになってしまいます。

といっても、これまでに発見された多くの遺伝子のうち、発達が遅れる原因となる遺伝子というのはありましたが、知能のレベルを決定づける、つまり知能の高い子はこれが影響しているというような遺伝は発見されていません。さらに付け加えれば、先々見つかることもないだろうと思われます。

さきに述べたとおり、知能の指標というのは一つだけではありません。知能の高い低いを決定づける遺伝子というのは、大変膨大な量があります。重視される能力ほど、多くの遺伝子がかかわってきますので、例えば御両親、祖父母といった、せいぜい2代さかのぼった程度の能力は、直接遺伝に影響があるものではないと唱える学者さんも存在します。

遺伝の力を生かせる環境を用意しよう

また一方では、才能には遺伝ではなく環境のほうが影響力が強いのではないかという説もあり、それを証明するような有名な逸話もあります。

ジーニーという少女は、生後1年半から、もう思春期を迎えようという13歳の大切な期間、暗い部屋にひとり、監禁状態で育てられました。食事などはとっていましたが、外の世界の事物を見たり、聞いたり、触れたりという刺激情報は完全に遮断された状態だったのです。その結果、ジーニーの知能は13歳になっても全く発達が見られませんでした。

ここではっきり言えることは、遺伝子の欠陥というのも無視はできないものの、極端に生育環境が悪い状態で過ごすことも、知能の発達を阻害する原因になるということです。ごく正常というか、健常な遺伝子を持っていたり、ごく当たり前の環境で育てられたりした場合は、たとえ子供が優秀であろうが、平凡であろうが、遺伝子が影響しているかどうかをはかりしることができません。

しかし、ジーニーの話には後日談もあるのです。彼女はその劣悪な環境を脱した後、3年の間に数百程度の言葉を習得し、ごくゆっくりではあるものの、他人との会話もできるまでになりました。

13歳といえば、健全な遺伝子を持ち、ごく当たり前の環境で育った子供であれば、言語発達の敏感期はとうに過ぎている年齢です。そういった状況で、わずかながらでも言語というものを覚えることができたのは、ヒトの脳には生まれつき、いわば遺伝的に、言語を理解する能力を得るシステムが備えられているからではないかと思われます。さらに、環境に順応し、変化しようとする力が、脳には最初から組み込まれています。

このようなことから、せっかく遺伝子に最初から組み込まれたすぐれたシステムを、育児を担う立場の大人たちが何をすべきかがわかってくるのではないでしょうか。子供が優秀に生まれついたかどうかを気にしたり、気に病んだりするのはやめて乳幼児期に、子供が育つのにふさわしい環境を考慮しながら子育てに努めるということです。乳幼児期は、脳の柔軟性が高い時期なので、環境が大きく影響するのです。

性格をつくる行動様式は50~60%遺伝する

人の性格ほど十人十色、百人百様という言葉がふさわしいものはありません。人の数だけ性格(キャラクター)があると言ってもいいほどです。
しかし、心理学的な分類をすると、そういった星の数ほどあるキャラクターというものは、もとをただせば、あるは決まった数の「性格要因」といわれるものの組み合わせだそうです。その決まった数とは、何とたったの三つだとも言われています。

性格要因というものを分類すると、諸説はあるものの、脳科学的な分野で特に重視されているのは次の三つです。「外向的であるか、内向的であるか」、「神経質かどうか」、「衝動性が高いか低いか」。

いずれも、心理学分野でいえば行動パターン、脳科学的な見地でいうと、環境によって刺激を受けたとき、どのような反応を見せるかといった、要するに脳の基本的な機能に基づいたものだからです。

「外向的であるか、内向的であるか」というのは、「積極的な性格か、消極的な性格か」、もしくは「好奇心が強いか弱いか」に通じるものですし、神経質であるかどうかは、いいかえれば敏感か鈍感かということになります。

衝動性の高さは、よい意味では大胆さ、悪い意味では攻撃的になりやすいかどうかにかかわることです。そして、このような性格要因に深く関係する遺伝子というのは、実はそれぞれ発見されています。

今申し上げた三つの性格要因は、それぞれが関係しているように見えて、実はそれぞれが独立しているのです。いわゆる「おとなしい子」というのは、内向的でなおかつ衝動性も低く、用心深い性格であると思われそうですが、基本的に内向的であっても、実は内に衝動性の高さを秘めた子供というのも珍しくはありません。

「ふだんはおとなしいが、時々びっくりするような大胆な言動をする子供」がいるでしょう。そして、その大胆さがどのようなときに発揮されるかは、周囲からの刺激に対してどの程度神経質になっているか、感受性の高さなどが影響するのです。

ところで、遺伝子というものは、100%そのまま遺伝するわけではないのです。外向的であるか内向的であるかといった要素の遺伝は50ないし60%程度といわれていますが、ほかの二つについてははっきりわかっておらず、30ないし40%という説も、80%にも上るという話もあります。そして、3つの要因の組み合わせなら、遺伝はほぼ60%ということですが、これを高いと解するか、そうでもないかと解するかは人それぞれです。

参考までに、遺伝子が全く一致している一卵性双生児の場合と、半分だけが一致する二卵性双生児の場合を調べたある研究によると、遺伝の影響は50%とのことですから、残りの50%は環境によって形成するといえます。

子供の性格は、単純にこれで決まるというものではなく、遺伝と生育環境が複雑かつ絶妙に絡み、形作られていくようです。



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