さまざまなレベルの情報が統合される「知能と知性」

baby_sister知能と知性

親の最大関心事は、自分の子どもの頭脳の出来不出来かもしれません。知能あるいは知性と呼ばれる能力は、結局、脳のどのような働きのことをいうのでしょう。

知能指数では測れない知能がある

いわゆる「頭がいい」とされる人は、「IQ(知能指数)が高い」という表現が長い間されてきました。しかし最近は、全く別の目安が話題になりました。EQ(感情指数)と呼ばれるものです。

扱い自体にはやや世俗的な部分はありましたが、人間関係のつまずきから、人生がうまく運べない人が増える傾向が見えてきたことから、勉強の能力や事務処理をする「あたま」の能力とは別に、「こころ」の能力というものが必要なのではないかと気づいた人が多くいたのです。

そのような動きから、知能や知性といったものも捉え直すべきではないかという考え方も生まれてきました。まだ試みともいうべき研究段階のため、確たる定説というわけではありませんが、現段階では次のような考え方が主流です。

まず基本にあるのは、人間の知能は一つではないということ。複数のそれぞれに独立した働きを持つ知能的なものが重なり合っているものだという考え方で、「多重知能説」といいます。この複数の知能というものには諸説があります。

例えば、母親とボール遊びを楽しむ赤ちゃんの頭の中を覗いてみましょう。まず、この赤ちゃんは、母親とボール遊びをするために、「空間的知能」「身体運動的知能」を使っています。それと同時に、母親とのコミュニケーションを楽しむため、「対人的知能」「個人的知能」も働かせるという高次元のことをやってのけているのです。

ところで、知能が一つでないということは、意外と理解しやすい考え方ではないでしょうか。学業に絞っても、算数は得意だが国語がだめとか、芸術的な方面には才があるが、運動能力は低いといった例はよくあります。多重知能説というのは、算数や国語といった学業面ではかりやすい知能だけではなく、人間関係に関連する対人的知能(あるいは社会的知性ともいいます)、感情のコントロールに関連する個人的知能(または感情的知性)などもあり、それぞれが独立して機能することを提唱する説です。

いわゆるキレやすい(怒りっぽい)人、引きこもりがちな人というのは、前述したような対人的知能や個人的知能がうまく発達させられなかった、あるいは働き方に偏りが見られたという言い方ができるかもしれません。何度も言いますが、それらは算数や国語といったものとは別次元の知能です。

算数の能力を伸ばすには、数や計算の学習というものが必要ですが、対人的知能や個人的知能というものもを伸ばすのもまた学習が必要なのです。

IQで測れるのは抽象的な思考力

知能検査というものがあります。IQを測定するテストのことです。これには言語、数といった概念と記号を使って問題を解釈するので、どうしても抽象的な思考力が必要となります。これはある種の物差しとしては使えますが、それでも一部しか測れません。

また、IQの算出法も、全く問題なしとはいえません。各問題を大半の子どもが解ける年齢をあらかじめ設定し、生活上の実年齢よりどの程度上の年齢向けの問題が解けたを指数にするという、いささか乱暴さが否めない手法なので、いわゆる「おませ」「生意気」などと大人に評されやすい子どもは、いい成績を残すことが往々にしてあります。

さらに、何度も同じようなテストを受けていれば、要領を覚えてしまうので、どうすればいい成績がとれるかを「覚えて」しまい、その後のテストでは好成績ということもよくあります。

言うまでもありませんが、IQはあくまで目安の一つと受け取ることこそ、賢い考え方です。

五感を知能にするのは前頭連合野

多重知能を構成するぞれぞれの知能は独立していて、実際の行動には、複数の知能を一緒に使うことがしばしばあります。複数の異なる知能を均衡のとれた形で組み合わせ、機能させようとするとき、脳の前頭連合野の領域が機能すると考えられています。

前頭連合野の働きは、「見る」「聞く」「感じる」などの五感の情報を、心もち(感情)や今までの経験からの記憶と組み合わせて判断し、運動神経に指令を出すということです。いわば脳の最高指令塔ともいうべき箇所です。算数・国語といった学業にかかわる知能も、人間関係に関わる知能も、もとをただせば情報は五感から入ってくるものです。

前頭連合野は、例えるならスーパーコンピューターのようなもので、五感からの情報を駆使し、いろいろな知能を作り上げてくれます。ヒトの前頭連合野が、遺伝情報的に大きな差のないチンパンジーの実に6倍も大きな発達を遂げたのは、そのためであると言われています。

考えて判断するから情報が知識になる

前頭連合野の働きの中で、ワーキングメモリのといわれる部分は、複数の知能を組み合わせて行動プランを立てるのに役立ちます。ワーキングメモリは、記憶と情報操作の役を果たします。

問題解決のために必要とされる情報を一時的に取り出して記憶し、解決策を考えて答えを出します。情報判断能力や、今の言葉でいうと「空気を読む」ということにつながりましょう。思考力といってもいいかもしれません。

ワーキングメモリには短期記憶が置かれます。これはその場の判断や思考に使われるという点で価値ある記憶であり、やがて長期の記憶として海馬と呼ばれる部分に格納されます。長期記憶は長期記憶として、必要に応じて前頭連合野がリマインドしてくれれば、学習経験としての活用がかないます。

その一方で、短期記憶のうち、思考や判断の材料として使い道のなかったものは、そのうち消滅してしまいます。概して子供の記憶力というものは、その飲み込みの早さからスポンジにたとえられるほどですが、吟味されることのない丸暗記であるということもいえます。性質としては、使われなければ消えてしまう運命にある短期記憶です。経験則のような意味のある記憶は、子供のうちはさほどではなく、年齢を重ねるごとに成長し、ピークは30代ともいわれます。

後々何度も繰り返し使えるような意味ある記憶、知識を増やすためには、自分の頭で考え、判断を下し、意味のある記憶がふえるように、ワーキングメモリを使う機会を増やすことが肝要です。これが、単なる情報を知識として蓄積するための、ヒトとしての知恵です。



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