母親の代わりではない独自の存在に「父親の役割」
父親不在状態の子育てという問題が幾年となく指摘され、さいきんでは「イクメン」などという言葉の登場でもわかるように、育児に積極的にかかわる父親がふえてきました。同時に、少し立ち止まって考えてみたい問題も浮上してきました。
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現代の父親は「第二の母親」かも
このごろは「イクメン」という言葉がもてはやされているように、ゆとりのある週末だけでなく、帰宅を早めての仕事終わりや、時には平日に有給休暇をとって子育てに協力しようというパパさんも増えてきたようです。
日々子育てに追われる母親にしてみれば、手伝ってもらえば負担が減って嬉しいし、赤ちゃんも、お父さんと遊べれば喜びます。
その一方で、「育児の手伝いは父親の役割ではない。父親に家庭で果たすべき役割などない」といった厳しい指摘をする専門家も少なくないという事実を御存じでしょうか。そして、その理由は一体なぜでしょう。
かつては「子供は社会で育てるもの」という考え方が、なかなか理想的な形で実現できていました。大家族は当たり前の上、肉親でなくても子供を気にかけたり、時には本気で叱ったりしてくれる大人がそこいらじゅうにいた時代の話です。
そういった形態は、今となってはノスタルジックな前時代のエピソードになってしまっています。そうして責任や負担を持ちあっていたはずが、核家族化などで全責任を親が背負うのが当たり前の状況になってきました。
そういう時代だからこそ、例えば子育てに関しても情報というのは重要なものですが、小さなうちから様々な情報に触れて育つのが当たり前になった子供たちを守るためには、親はその整理をする必要もあります。
それも、主に母親の役割になっていますから、そこで父親がその重荷を代わりに担ってくれれば、どれだけ助かるかわかりません。なのに、なぜ「父親の役割はない」などと言われてしまうのでしょう。
今、乳幼児を養育している父親というのは、自分たちもまた、父親の存在感が薄い核家族家庭で育った可能性が高いのです。明確な父親のモデルというものを持たず、イメージが正確に描けません。
古来、父親にしかこなせない父親特有の役割があったはずですが、それを果たすことができない状態で育児にかかわると、母親がもう1人増えるだけだという意見があるのです。
母親の子供に対する愛情はすばらしいものですが、その結果、子供の自立心が育ちにくくなるのではないかと懸念されます。
同じ価値観を持った人間が2人で子育てするくらいならば、もう1人はいなくてもいいのでは、むしろいない方がいいのではという手厳しい意見です。
父親の最大の役割は母親を支えること
しかし、逆に考えられないでしょうか。自立心を阻むほど、母親の愛情が濃密なのが問題ならば、父親の育児参加は、その打開策になるのではないか、と。
父親の最も重要な役割は、母親という立場にある奥さんを支えることです。といっても、それでは漠然とし過ぎていてわかりにくいと不満に思われるかもしれません。現代の乳幼児を育てるパパさん世代ですと、そのふさわしいモデルケースを得にくいということについては、前述のとおりです。
まず、基本的なことですが、奥さん、つまりは赤ちゃんのお母さんの気持ちを理解するように努めましょう。殊に初めての子育てですと、戸惑うことも多いものです。
そして、やはり理想として思い描いている子育てというものがあるはずです。だからこそ、うまくいくことばかりでない子育てに戸惑うといういい方もできます。
ここで具体的にすべきことは、自分は子育てにかかわる時間は多くないかもしれないが、自分も親として責任を持つということをはっきりと口に出して言うことです。
子育て中にトラブルがあったときに、「子育てはお前の仕事だろう」「お前が何とかしろ」などという言葉で奥さんを突き放してしまうお父さんがしばしばいるものですが、これでは、何かと悩みの多いお母さんに孤独感を味わわせ、なお追いつめてしまうだけです。
きちんと責任感のあるお父さんならば、親としての自覚を持ってはっきりと宣言しておくことで、こんな無責任な言葉は口にできなくなります。スタートは「そこから」です。
「母親が2人いるにすぎない」という問題点について、これも先ほど触れました。つまり、母親とはまた違った観点でお子さんに接するということが大事です。
これはお母さんの性質にもよるので、ケース・バイ・ケースともいえますが、お母さんがお子さんに対して、完璧にやりとげることや、さっさと済ませてしまうことを求め、くちうるさく注意しがちなタイプだった場合。こういうタイプの人は、過干渉になりがちであるという危険もあります。
父親はそれとは正反対に鷹揚に構え、とにかく子供がゆっくりでいいからやる、少しふつつかなところがあっても、自分で最後までやりとげるのが大事なのだという価値観で接し、見守るようにしましょう。
女性にはない、男性らしい視点で知恵を絞り、それをお子さんに授けてやれるかどうかを考えるのもいいでしょう。
逆に、余りにもぬるい、甘やかしがちな母親の場合は、「子供に優しく接している」といった長所はある程度評価しつつも、締めるべきところは締めるというスタンスで当たった方がいいかもしれません。怖がらせては元も子もありませんが、父親の威厳というもので、厳しく愛情深く接するのです。
ある程度お子さんが大きくなってから尋ねるとよくあることですが、「お父さんの好きなところ」として、「いろいろなところに連れていって遊んでくれる」というのを挙げる子がよくいます。
行動的なアウトドア派のお父さんなら、自分が楽しみながら子育てというのは十分に使える手です。海や山など遠くにいく必要はありません。
例えば、ちょっと過ごしにくい天候の日に敢えて外に出て、その暑さ、寒さや雨の冷たさを味わってみるというちょっとした冒険などいかがでしょう。
女性だと少し避けてしまいがちな、「風邪を引かせてしまいそう」「けがをするかもしれない」といった状況も、それを体感させること自体が貴重です。
もちろん、本当に風邪を引かせたり、大けがをさせてしまうのは感心しません。大人の知恵で分限はわきまえ、思い切って外で遊ばせられるのは、父親の役目かもしれません。
子どもにとって乗り越えがたい存在に
父親がいつも子供にとっての理想やモデルタイプになることが難しいのは、今まで述べたことからも明らかです。
例えば家業を継ぐも継がないも子供の意思を尊重ということが多い時代ですから、当然といえば当然です。
しかし、子供がある程度の年齢になるまでは、子供にとってなかなか越えられない壁的な存在になることもたいせつです。お子さんが男の子ならなおのことです。
成人男性ならある程度できるが、子供にはちょっと難しいというようなことを格好よく披露するというのはどうでしょうか。縄跳びの難しい技でも、側転のような動きでも十分です。
あるコミックの話ですが、会社の派閥争いで悩んでいる父親が、リコーダーのテストを憂鬱に思っている子供に「お父さんはリコーダー吹ける?」と尋ねられ、「吹けるよ」と答えたら、満面の笑みで「お父さんすごいね」と称賛されたというエピソードがありました。
お子さんにとっては、会社での出世などは無関係で、自分が苦手なリコーダーが吹けるお父さんが「かっこいい」というわけです。そうしてお父さんが「すごい」「かっこいい」と思うことができれば、「自分もかっこいい大人になりたい」という理想を描くことにもつながります。
大人の男同士のつき合いを見せるのもいいですね。社会の中で生きていくには、対人関係は重要です。そのためにはまず、プライベートでつき合える、会社の人間以外との関係が豊かであることが大事です。
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